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Deutsches Institut für Japanstudien

スザンヌ・クライツ-サンドベリ

教育学
1995年5月 〜
(専任研究員, 1995年5月1日 - 2001年5月13日)

比較教育学


比較教育学は、当初ドイツでは各国の教育制度の違いを比較検討することに研究の重点が置かれていた。国際的な視点から見ると、主な研究団体はCESE(ヨーロッパ比較教育学会)、アメリカの比較・国際教育学会、そして1996年に設立されたCESA(アジア比較教育学会)などを挙げることができる。これらの学会で比較研究を行なっていた教育学者が国際的に連携を図ることによって比較教育学の研究対象が広がり、事実上、教育学のあらゆる研究分野に及ぶことになった。ドイツでは、例えば青少年研究の分野において、現代の青年期の捉え方について実地研究から得られたことを理論的に裏付けるために、国際的に比較研究されるようになった。


青少年研究


ドイツにおける青少年研究は1960年代の半ばから研究領域が拡大し、80年代の終わりに刊行された二つのハンドブック(Markefka, Nave-Herz 1989, Krueger 1988)によって、研究分野としての確立を見た。中心的な関心は「青少年の社会化、及びその過程において発生する様々な問題についての理論化」であり、多岐にわたる実地研究・調査分析をその基礎としている。青少年期、すなわち幼年時代から成人するまでの生活時期を研究対象としていることについては、この概念自体が近代社会の産物であること、また時代、地域、民族といった属性によってこの概念の位置付けに差異及び変化が認められること、などにも注意が払われなければならない。日本において上記の青少年研究を行なう場合の一つの手がかりとして、「モラトリアムに関する研究」に特徴を見出すことができる。例を挙げると、筑波大学教育学系教育社会学研究室は1991年に、東京都にある公立、私立の高等学校5校の1年生から3年生1263人を対象にアンケート調査を行なった。その結果から明らかになった日本とドイツの高校生の共通点は、「教育を重視している」「現代の消費社会を当然として受けとめている」ことであり、相違点は日本の高校生に「男女がそれぞれ異なった世界観、生活パターン、そして友人グループを持つ」傾向が多く見られたことである(Kreitz-Sandberg 1994)。 今後、以上のアンケート調査の結果等を踏まえて分析を深めるために、日本の青少年及びその両親に対しての直接面接を計画している。その際には、彼ら彼女らの社会的なネットワーク、すなわち人間関係や友人関係について、また日本の家庭の教育観について、男子教育と女子教育が分離されている点についてどのように考えているのか、男女の考え方の差が、教育の場であるいは社会に出てからどのような影響を及ぼすのか、そしてそれが未来観(家族観や仕事観など)にどう反映されてくるのか、等について研究を進めていく。


社会研究における研究方法


日本の教育学界ではこれまで量的研究法が主流を占めてきたが、近年エスノメソドロジーを採用するケースも散見され、教育社会学の分野では質的研究法の採用も増加している。ドイツの社会科学の分野における日本研究では、特に質的研究法を積極的に採用しているが、理論及び方法論の確立が目下の急務である。日本に関する社会研究を比較調査する場合にも一定の慎重さは要求されるが、複数の理論や方法論の導入を図ることにより、新たな研究の可能性を提示できるのではないかと考える。


ジェンダー研究


ほとんどすべての既存の研究分野において、指定されている問題は男性(あるいは異性的視点)からの無自覚的発問であった可能性が高く、このことについて自覚的にこれまでの研究を捉え直し、新たな知の枠組みを構築する必要がある。ジェンダー研究とは、こうした問題意識を基調に展開されるものであるが、国や地域など歴史的・伝統的な属性に研究の特徴が発現することに留意したい。例えば、ドイツにおいてジェンダー研究とは、男女平等の実現を前提としている一方、日本ではそうした男女平等実現のためにジェンダー研究があるという位置付けよりは、それぞれの性についての対比分析(女子教育と男子教育など)がこれまでは中心的だったこと、などが挙げられる。


青少年の自殺


ドイツのメディアが日本の青少年の自殺を取り上げる場合には、「日本人の自殺率が高い」「日本人の自殺観(あるいは死生観)がヨーロッパ人と異なる」点を前提とすることが多いが、そこには既に抜き難い先入観が形成されていると言わざるを得ない。そのため、この「青少年の自殺」という研究課題については慎重に取り扱わなければならない。例えば、ドイツのメディアは「日本人の自殺率は高く、したがって青少年の自殺も多い」と位置付けているが、実際に分析してみると、50年代には青少年の自殺率が高かったが、70年代以降の日本の若者の自殺率をドイツやその他の先進諸国と比較しても、大した差異がないことが明らかである。この他、各国のメディアの報告とは異なっているが、青少年の自殺について日本、ドイツ、アメリカで発表された社会科学系の諸論文に見られる理論と視点には類似している点が多い。それは「自殺防止に関する研究」が中心となっていることを指摘しておく。

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近代日本における社会変化-国家・家族・個人