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Deutsches Institut für Japanstudien
スヴェン・サーラ

スヴェン・サーラ

スヴェン・サーラ
人文科学研究部部長 近現代日本政治史・外交史
2000年11月 〜
(専任研究員, 2000年11月1日 - 2005年4月1日)

 1. 近代日本における政軍関係
大正政変で始まる大正時代が、日本近現代史に於いて非常に重大な転換期であることには違いない。しかし、その大正時代の研究を考察すると、「大正デモクラシー」潮流に重点がおかれ過ぎているように思う。つまり、大正時代の歴史的な重要性というのは、寧ろ陸軍というプレッシャー・グループの内政に於ける独立的な政治アクターとしての地位確立にあるのではないだろうか。
明治時代には、政治と軍事はまだ「政軍一致」という状態にあり、軍隊が政治に干渉することは殆どなかった。しかし大正政変を境に、陸軍が独立した政治アクターとしての地位を確立し、政治に干渉する前例を作った。しかも明治時代に得た政治的特権(統帥権、軍部大臣現役武官制、帷幄上奏権利、参謀本部の独立、植民地官制の独占、帝国国防方針等)を概ね守ることにも成功した。要するに、大正時代になってから、軍部と民間政治家の対立が本格的になったと考えられる。
勿論「大正デモクラシー」潮流を否定することはできないが、陸軍の政治的アクターとしての地位確立にこそ、大正時代の日本史に於ける重要性があり、それ故に、大正時代こそが、日本現代史の岐路であると考えられる。しかも日本帝国陸軍の「大正デモクラシー」時の内政に於ける独立的な地位のあり方とその発展を考察することによって、現代の政治に於いてなお多くのところで見られるように軍隊が政治に干渉する危険性を指摘することが可能となる。その必要性に鑑み、今後の軍国主義・国粋主義研究に貢献したいと思う。
 
2. 近代日本史におえるアジア主義
開国以来の政治、思想的な議論の一環として、日本は将来西洋化への道を踏み出すべきか、もしくはアジア的なアイデンティティを保つべきか、という問題があった。自国の独立を守る為にはどれだけの近代化が必要であるのか、そして自国のアイデンティティを保つには、どこまで西洋化したらいいのか、という問題である。福沢諭吉のいう「脱亜入欧」が近代化・西洋化の全面的な肯定として解釈されることが多いが、いずれにせよこの「脱亜」論のアンチテーゼとして、早い時期からアジア回帰の浮上が目立っていた。
この議論における国民国家のアイデンティティを巡る思想家の論争と、国家存亡を目指す政治家の防衛政策論争は非常に密接繋がっているようにみえる。その二つの議論の接点として、所謂アジア主義という思想、運動を取上げることが出来る。元来、政治的な性格が薄かったアジア主義思想であるが、明治30年代から次第に政治色が濃くなり、政界と強い繋がりを持つようになった。その過程の中では政治結社、政社が非常に大きな役割を果したと思われる。アジア主義の思想を政治に持ち込む政治結社、主に東亜同文会と黒龍会の役割をこのプロジェクトによって解明していきたいと思う。

3. 明治維新」の歴史的な意義の再検討:「維新」・「クーデター」・「革命」?
世にいう「明治維新」は、現代日本の歴史において、最も大きな影響を及ぼした出来事のひとつであった。日本は明治維新により、封建時代に終わりを告げ、近代的かつ中央集権国家へと歩み出したのである。しかし、どうして1867/68年の「政変」とその後の変化は明治「維新」と呼ばれているのだろうか? 寧ろこの変化は革命といえるのではないだろうか?戦前・戦争直後の論争はともかくとして、最近の研究書にもこの明治維新の解釈については、著者自身の迷いが現れているように感じられる。
明治維新の性格をより深く解明し、「維新」「一新」「改革」「革命」そして「クーデター」という概念の再検討の試み及び明治維新の独自性とその日本史、さらにアジア史に於ける軌跡の分析を目下の研究プロジェクトの目的とする。

4. 日本の大陸進出の根源:
本田利明、平田篤胤、吉田松陰と江戸時代の海外拡張主義
明治維新は、日本の外交政策に根本的な変化をもたらした。今までの研究は、大抵徳川時代の鎖国から、明治時代の開国政策や海外拡張政策への突然な展開を前提にしている。しかし、開国はともかく、海外拡張政策は明治維新より以前、すでに江戸時代に思想的な根源があったに違いない。その時期がどのくらい過去に遡るかについての研究は、殆どなされていない。
江戸時代から明治時代にかけて、海外 ― つまりアジア大陸 ― 拡張の構想に興味深い連続性が現れている。江戸時代の思想家の本田利明や平田篤胤や吉田松陰等の残した著書を詳細に分析すると、その連続性が明白に出来るだろう。更に、明治、大正、昭和時代の日本の外交に、これらの著書がどのような影響を与えたのか、解明する必要がある。現在のアジアに於ける日本の地位を理解するためには、このアジア大陸への拡張主義の連続性を浮き彫りにすることが不可欠と考え、本研究プロジェクトに取り組んでいる。

4. 歴史・公民教科書問題
最近改めて話題になっている日本の教科書問題は、海外でも幅広く注目されている。なぜならば、これは言葉どおりの教科書問題としてではなく、日本の政治、社会を巡る諸問題の全てをまとめる議論であるからではなかろうか。
そこで重視しなければいけないのは、教科書問題における「軍事問題」という点である。軍事問題とは、歴史における日本の海外膨張という問題に限らず、現在の日本外交、日本政治体制(憲法改正問題)、そして日本国におけるシビル・ソサエティのあり方、役割、更に市民と国家、官民関係に関連している問題であると思われる。

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