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Deutsches Institut für Japanstudien

フェリックス・シュプレンべルグ

日本学、社会学
2012年4月 〜
(奨学生, 2012年4月1日 - 2013年3月31日)

felix.spremberg@posteo.de

博士論文要旨

日本における社会民主主義

背景
2007年以降の世界規模の金融危機から、新自由主義のパラダイムの下の政治、社会と経済は明らかに横道にそれ、新自由主義の中心である市場原理主義の影響で諸国家とその機構は窮地に追い込まれた。そして、各国で社会格差は目に見えて大きくなったと言える。「一億総中流」の意識を持っていた日本であるが、この状況は否定できなくなってきた。民主主義の切り崩しは、崖っぷちに立つ南欧の国々だけではないと言ってもよい。

英国の歴史学者トニー・ジャッド(1948 – 2010)は破綻をきたした新自由主義の社会モデルと第二次世界大戦後の「社会民主主義的なコンセンサス」を比較している。「社会民主主義的なコンセンサス」の重要なポイントは普遍的な福祉国家、富の再分配とケインズ主義的な経済政策であって、そういう政策によって高水準の平等が現実できたのである。西欧の社会民主主義だけではなく、日本の「万年野党」の社会党・労働運動も同様の役割を担って、ある程度までの平等を実現して来たのである。将来も資本家と労働者・失業者の対立が続くはずなので、労働運動の機構は一翼を担うだろう。

1980年代から「社会民主主義沈没説」(ダーレンドルフ等)が唱えられている中、社会民主主義はイデオロギー・機構として生き延びた。とは言うものの、政党としては逆風にさらされ続けている。この「社会民主主義的なコンセンサス」とその構造、不足な点、見通しを明らかにするのは社会科学の重要な任務と言ってもいい。

テーマ
私の研究は上述のコンテキストの基づき日本の左翼の諸活動を分析することである。具体的に左翼の中間派の諸グループの見分け、特徴づけ、それぞれの現状を明らかにする。そのため政党のマニフェスト・出版物、それぞれのリーダーの思想、政府の演説を分析し、社会民主主義に関する諸学論を参考にしながら、日本政治への新しい視角を得る試みである。

日本における社会民主主義は、常に背水の陣で小政党にとどまる社会民主党だけではない。2009年に政権交代を実現させた民主党の中にも社会民主主義的なグループはある。それらは、「旧社会党グループ」と呼ばれる「新政局懇談会」、「旧民社党グループ」と呼ばれる「民社協会」、また、鳩山グループも管グループも社会民主主義的な性格を持つという側面もある。分析結果のまとめとしてこれらのグループはそれぞれ「社会民主主義的」と言えるかどうかを明らかにし、日本における社会民主主義は「社会民主主義沈没説」を証明するのか、反証するのかの答えを導き出してゆく。

研究問題

  • 日本左翼の中間派の諸グループを「社会民主主義」と呼称してもよいのか。
  • 日本のケースは「社会民主主義沈没説」を証明するのか、反証するのか。
  • 日本社民はイデオロギー・目的・組織・代表機能をめぐってどのような特徴を持っているのか。
  • 日本の社民諸活動の状況と、その日本政治システムにおける役割は何か。

日本にはなぜ社会民主主義的な大政党はないのか。