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モニカ・ヒンケル (旧姓 レッテラツ)

モニカ・ヒンケル (旧姓 レッテラツ)

モニカ・ヒンケル (旧姓 レッテラツ)
日本学、日本美術史
2003年5月 〜
(奨学生, 2003年5月1日 - 2004年4月30日)


  • 明治時代の版画
  • ジャポニスム:ドイツ美術における日本版画の
  • ドイツの日本版画コレクションの歴史

テーマ:浮世絵師豊原国周(1835-1900)の歴史版画


本論文「浮世絵師豊原国周(1835-1900)の歴史版画」では、幕末から明治にかけての国周の版画作品を紹介します。国周は文明開化期に入っても江戸文化を忘れることなく、最後まで浮世絵の伝統的テーマに関わりつづけ、役者絵と美人画の製作に打ち込んでいました。しかしそれだけがこの絵師の特徴だったわけではなく、それに加えて国周にはこの重要な時期にもう一つテーマがありました:幕末明治という時代を描いていた歴史版画です。
幕末から明治にかけて日本が鎖国から開国へ踏み切り、西欧の文化を輸入して急激に近代化をはかったいわゆる文明開化期。この期に製作版行された浮世絵版画のうち、その代表的なものとして「明治絵」「開化絵」と呼ばれる一群の錦絵を取り上げてみると、これらは時代の記録として貴重な資料的意義をもっていることが分かります。今までの研究では国周に対するこの歴史的な主題はさほど注目されておらず、具体的な検討がなされていませんでした。

博士論文は幕末・明治時代のいわゆる歴史版画の様々な作品に論究しています。こうした版画は文化史においても大切な資料です。論文では国周を、歴史版画の分野における伝統的な浮世絵師の代表として捉え、明治絵や開化絵を詳細に説明することで、国周の作品を新しい別な視点から見つめ直します。まず、さまざまな伝統的な浮世絵テーマの中に、例えば役者絵,美人画、名所絵や風景画といったテーマの中に、国周が西洋のモチーフをどのようにして織り込んでいったのかを提示したいと思います。特に明治の西洋化はどのような方法で、どの程度まで伝統的な版画のデサインに影響を与えていたかを考えて見たいと思います。
さらにここで、国周の作品に見られる明治絵の新しいテーマを紹介したいと思います。一つの新しいトピックは御所絵であり、もう一つは私が同時代絵と呼ぶものです。国周が過去の出来事を描いた歴史版画と、国周の生きた時代の事件を描いた版画を識別するように、私は国周の生きた時代を題材に描いた絵に「同時代絵」と言う新しい用語をあてました。

私はこの調査に際して次の点について解明していきたいと思います:明治西洋化は国周にどのような風に影響を与えたか。彼は何を西洋的特徴として描いたか。西洋的要素はさまざまな方法にどうやって、またどこまで組み込まれていましたか。実際に起こったことにどのように影響されましたか。何の事件を描くと決定しましたか。特に同時代の浮世絵師の作品と比べると、国周の歴史版画の特色は何ですか。国周全作品から見ると、歴史版画の役割はどうですか。

浮世絵は一般的に江戸・明治時代の文化、歴史や社会を知るための貴重な資料の源泉です。そこで今回の発表では国周作品のおける領域を概観してみました。発表者は引き続き国周作品において美術的観点以外にも文化史との関連性を考えてみたいと思います。発表のテーマは国周作品の中ではあるいは最も小さいかもしれません。けれどもその調査はとても重要であり、それなしでは、将来国周の全画業を評価や検討することができません。