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Deutsches Institut für Japanstudien

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ドイツ-日本研究所 Deutsches Institut für Japanstudien
102-0074東京都千代田区九段南3-3-6 Tel: 03- 3222-5077


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国際刑法からみた東京裁判

2004年2月5日 / 6.30 P.M.

フィリップ・オステン (慶應義塾大学専任講師)

 米国で発生した同時多発テロ事件やそれに続くアフガン紛争とイラク戦争を通じて、国際刑法、ことに2002年に設立されたばかりの国際刑事裁判所(ICC)の果たすべき役割が、改めて注目されることとなった。しかし、刑法と国際公法が交差する「国際刑法」は、比較的に歴史の浅い法分野である。国際刑法の近代的発展に最も大きな影響を与えたのは、第二次世界大戦後に行われたいわゆるニュルンベルグ裁判(正式名称:国際軍事裁判)と東京裁判(極東国際軍事裁判)であった。東京裁判は、ニュルンベルグ裁判と並んで、史上初の、戦敗者の戦争犯罪等を対象とした国際軍事法廷であった。しかし、国際刑法の分野において、従来、東京裁判が、特にニュルンベルグ裁判との比較において、取り上げられることは稀であった。そして、ドイツ・日本両国内において、戦犯裁判への法律学の対応も異なっている。日本の戦争犯罪は、A級戦犯を扱った東京裁判と、連合国各国が各地で独自に実行した「B・C級裁判」で裁かれた。戦争犯罪者はA級、B級、C級に分類され、後二者で「通例の戦争犯罪」が問題になったのに対して、前者ではこれまでの国際法にはなかった「平和に対する罪」や「人道に対する罪」などが問題となり、日本の軍事的・政治的指導者層がその対象となった。これらの新しい犯罪構成要件をめぐって、国際刑法における罪刑法定主義の射程範囲など、さまざまな法的争点が問われることとなり、活発な議論が繰り広げられた。
本講演では、以上のような議論を概観し、その後の国際刑法の発展、とくに国際刑事裁判所の設立に至る経緯などもたどり、現在の国際刑法の水準に照らして、東京裁判の法的問題点とその今日的意義について、若干の検討を加えることを志してみたい。

講演者紹介:
 ドイツ・ベルリン(フンボルト)大学法学部、慶應義塾大学法学部および同大学院法学研究科にて法律学を専攻する。1999年ドイツ司法試験合格、 2002年法学博士号取得、2003年弁護士登録。現在、慶應義塾大学法学部専任講師(刑法・国際刑法・ドイツ法)。主な著書・論文に「国際刑事裁判所規程と国内立法―ドイツ『国際刑法典』草案を素材として」ジュリスト1207号(2001年);「国際刑事裁判所の設立と立法上の対応―ドイツ『国際刑法典』草案が日本に示唆するもの」〔上・下〕捜査研究608号・610号(2002年); Der Tokioter Kriegsverbrecherprozeß und die japanische Rechtswissenschaft, Berlin 2003などがある。