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Deutsches Institut für Japanstudien


皮膚の想像力

1999年7月16日 - 1999年7月18日

国立西洋美術館の特別展「記憶された身体-アビ・ヴァールブルクのイメージの宝庫」を機会に、ドイツ日本研究所と共同で国際シンポジウム「TheFacesofSkin/皮膚の想像力」が開催されます。アビ・ヴァールブルクが異なる学問領域との交流から新見地を切り開いていったように、このシンポジウムでも美術史の外からの視点を導入することによって、新たな美術史学の可能性を探ろうという試みです。

造形作品が様々なメディアで制作されるようになった現在、かつての美術という概念は揺らぎ始め、既存の美術史学では対応しきれない作品や状況が見え始めてきました。また、それに伴い、過去の美術作品に対する我々の態度も変化し、近年の美術史学は「美術作品の歴史的研究」から「イメージの歴史的研究」へと移行しつつあるといえるでしょう。

そのような状況のなかで、美術史あるいはイメージ研究の将来を見つめるための出発点として「皮膚」というモティーフが選ばれました。皮膚は、身体を覆う具体的な「表面」として、従来から人体を描き表わす際の重要な要素として存在していますが、特に電子メディアが急速に発達した現代においては、身体と外部との領域の境界/接点という拡張した抽象的存在としても捉えることが可能です。このシンポジウムでは、こうした「イメージとしての皮膚」から「皮膚としてのイメージ」に至る、広い意味での「皮膚」の問題を扱うことにより、イメージへの新たなアプローチを探ろうとしています。例えば、表面のマティエールが持つ物質性や、描かれた表象としての皮膚についてのみならず、体内の変化が投射される表層としての皮膚/病的変異、他者との関係性に表われる境界としての皮膚/仮面、身体の上のもうひとつの皮膚/衣服といった、生物学的、医学的、文化人類学的、社会学的なさまざまな観点から、美術史研究に多様な価値観と新しい視点が持ち込まれることが期待されます。

言い換えるならば、皮膚をイメージの比喩としてとらえ、その物質性と脱物質性のさまざまな「現れ」を検討すること、まさしく美術史という境界/皮膚を拡大すること-それがこのシンポジウムの目的なのです。

発表

2日目          1999年7月17日 (土)

10:00–10:30
シンポジウムの目的と意義

10:30–12:30
セクション1:身体の境界

表面の深さ -身体の境界の文化史

クラウディア・ベンティーン

皮膚と被服 -身体の部分としての肌のイメージ

深井晃子

14:00–16:45
セクション2:イメージの中の皮膚、皮膚としてのイメージ

自らと他者を分かつしるし-日本絵画に表わされた肌の表現

池田忍

西洋美術における描かれた皮膚:素材、技術そして理論

アン=ゾフィー・レーマン

「分割されざる個人Individual 」幻想への挑戦:岩明均『寄生獣』の皮膚感覚

稲賀繁美

3日目          1999年7月18日 (日)

09:30 - 11:00
セクション3:顔と仮面

殻と脱ぎ捨てられた衣との間の皮膚

ウルスラ・パンハンス=ビューラー

仮面という装置 -人はなぜもうひとつの界面をつくるのか

吉田憲司

11:30 - 12:15
セクション4:侵潤 -美術史のために

離れて見る十字架 -ブリューゲルの"十字架を担うキリストモにおける感情と風景

カタリーナ・カハーネ

15:45 - 17:15
セクション4-3 :侵潤 -美術史のために

13:45 - 14:30
セクション4-2 :侵潤 -美術史のために

キリストの皮膚 -病的変異と聖性発現のメカニズム

喜多崎親

もうひとつの皮膚-ルネサンス初期の図像とメディアにおける歴史人類学的パースペクティヴ

ゲルハルト・ヴォルフ

1日目          1999年7月16日 (金)

17:00-19:00
講演会

開催の挨拶

高階秀爾

「どの時代にも古代復興がある」(「記憶された身体」展のコンセプト紹介)

クリストフ・ガイスマール-ブランディ

芸術の皮膚論の地平

谷川 渥