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Deutsches Institut für Japanstudien
少子化問題と格差社会 - 日独比較

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場所

女性と仕事の未来館
東京都港区芝5-35-3


アクセス

Co-organizer

協力:上智大学  助成: 国際交流基金

登録情報

参加費無料:
参加ご希望の方は10月31日までにオンライン上から、または チラシのFAX申込用紙 にてお申し込みください。



国際シンポジウム

少子化問題と格差社会 - 日独比較

2008年11月6日 - 2008年11月7日

本国際シンポジウムは日本とドイツの少子化問題と両国における社会格差 との関係に焦点を当てました。このふたつの観点から両国の比較を掘り下げ、 少子化の原因をより深く理解し、政策決定のための提案を目指しました。 「人口動態の抱える時限爆弾」- すなわち少子高齢化の進行と格差社会の拡大は、今日の多くの先進工業国が直面している最大の問題です。日本とドイツにとって、このふたつ は特に深刻な状態にあります。

日本の人口は世界の中で平均年齢、平均寿命とも最高となっています。そこから多くの問題が派生することが明らかになっていますが、その一方で解決策への取り組みは始まったばかりです。出生率に関しては、日本もドイツも低い値(日本1.34、ドイツ1.33)を示していますが、さらに両国において平均寿命が延び続けることを予想すると、国全体にとって重要な問題となります 出生率低下の原因については数多くの研究や政策提言がなされており、しばしばスウェーデンやフランスにおける政治的・社会的条件が日独両国の目指すべき理想像であるとされています。子育て環境の改善、女性の就労及びキャリア開発支援、ワーク・ライフ・バランスの確立、若年世帯の負担軽減策の強化などが、両国の出生率を高めることであろう解決策としてあげられています。

少子化問題と家族政策に関する国際比較は重要な研究成果を生み出してきましたが、日本においては少子化問題と拡大する社会格差の相互依存関係の視点からの研究が十分に行われてきませんでした。ドイツでは社会階層や社会格差の問題がかなり以前から学問や政治、公の場で議論されてきましたが、日本で同様の議論が一般的に意識されるようになったのは、ここ数年のことです。

社会的格差の現象は、まず経済的状況のもとに現れ、日本社会の一億総中流意識を脅かすものとして認識されました。それから数年後、本会議の発表者でもある山田昌弘氏は「格差社会」という言葉を世に送り出しました。2006年度流行語大賞で「格差社会」が第4位になったことからも問題の時事性がうかがわれます。1980年代には、日本人の多くが中産階級に属しているという意識で社会を覆っていたものの、近年、人々の間には収入・所得や雇用、そして労働における不平等さへのが意識が広まってきました。貧困層の増加、しだいに低下していく社会階層の増加という状況のなかで「ワーキングプア」という言葉もよく耳にするようになりました。格差問題は、今ではジェンダー、教育、規範と価値観、消費行動、エスニシティ、そして都会と地方の差などと関連づけて論じられるようになり、議論の幅がますます拡がっています。

これらの社会状況を踏まえ、ドイツ-日本研究所は上智大学の協力と国際交流基金からの助成を得て、日本とドイツの少子化問題と格差社会の関連性をテーマとした国際会議を開催しました。

発表

1日目          2008年11月6日 (木)

10:00-10:20
開会挨拶 Greetings

Greetings   開会挨拶

フロリアン・クルマス


ドイツ日本研究所

ジャン-クロード・オロリッシュ(上智大学)

フロリアン・クルマス(Florian Coulmas)



ドイツ-日本研究所所長。デュースブルク・エッセン大学東洋研究所教授(日本研究)。国立国語研究所、ジョージタウン大学、中央大学などさまざまな環境で、教育・研究に携わる。10編を超えるモノグラフをはじめ、発表論文多数。ジャパンタイムス、ニューチューリッヒ新聞および南ドイツ新聞などに頻繁に寄稿している。 email: dijtokyo@dijtokyo.org


主な論文・著書:

  • Population Decline and Ageing in Japan – The Social Consequences(日本における人口の減少と高齢化), London: Routledge. 2007.
  • Language Regimes in Transformation(社会変革、言語と政治形態)Berlin, New York: Mouton de Gruyter. 2007.
  • Die Gesellschaft Japans. Arbeit, Familie und demographische Krise(日本社会-仕事、家族と人口の危機), Munich: C.H. Beck. 2007.

ジャン-クロード・オロリッシュ(Jean-Claude HOLLERICH)


上智大学外国語学部教授。同大副学長を兼務。Sankt Georgen Graduate School of Philosophy and Theology(ドイツ、フランクフルト アム マイン)で博士号取得。Sankt Georgen Graduate School of Philosophy and Theology(ドイツ、ミュンヘン)で修士号取得。
ヨーロッパの宗教、アジアの文化とヨーロッパの文化の出会いを研究・専門分野とする。 e-mail: j-holler@sophia.ac.jp


主な論文・著書:


  • “Die französischen Jesuiten in Siam” (シャムにおけるフランスイエズス会)Bulletin of the Faculty of Foreign Studies, Sophia University, 41: 61–79. 2006.
  • “The Echternach manuscripts”(一口サイズのルクセンブルク)4: 6–7.
  • “First Globalization: European grammar in Asia”(第一グローバル化:アジアにおける欧州文法の)in Towards equitable language policy in Asia, proceedings of the 5th Nitobe Symposium. Tokyo: European Institute, Sophia University: 61–63. 2008.

10:20-10:40
基調講演 Keynote Speech

「少子化問題と格差社会-政策決定者の視点より」

猪口 邦子(衆議院議員、元少子化・男女共同参画内閣府特命担当大臣)


猪口 邦子(いのぐち くにこ)


衆議院議員。自由民主党国際局局長代理。日本学術会議会員(政治学)。2005-2006年内閣府特命担当大臣(少子化・男女共同参画)を務める。上智大学外国語学部卒業。エール大学で政治学修士号、博士号を取得。2006年まで上智大学法学部教授。


主な論文・著書:


  • 『ポスト覇権システムと日本の選択』(筑摩書房1988年)
  • 『戦争と平和』(東京大学出版会1989年・吉野作造賞受賞)
  • 『猪口さん、なぜ少子化が問題なのですか?』共著(ディスカヴァー・トゥエンティワン2007年)

10:40-11:00
趣旨説明 Introduction

「ドイツと日本における少子化問題と格差社会について」

バーバラ・ホルトス


ドイツ日本研究所

アクセル・クライン


ドイツ日本研究所


バーバラ・ホルトス(Barbara HOLTHUS)


ドイツ–日本研究所研究員。専門は社会学。トリーア大学にて博士号取得。ジェンダー、メディア、保育問題、家族社会学、社会変化、及び人口推移を研究・専門分野とする。 e-mail: holthus@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • “Traum“- oder „Alptraum“-Männer? Männerbilder der Frauenzeitschrift An an in den späten 90er Jahren“(“夢のような” それとも “悪夢のような” 男性?-1990年代後期の雑誌『アンアン』における男性の表象)Gössmann, Hilaria; Andreas Mrugalla (eds.): 11. Deutschsprachiger Japanologentag in Trier 1999, Vol. 1. Münster, Hamburg, London: LIT-Verlag. 2001.
  • “Sexuality, Body Images and Social Change in Japanese Women’s Magazines“(日本の女性誌におけるセクシュアリティー、身体イメージと社会変化)Wöhr, Ulrike, Barbara Hamill Sato (eds.) Gender and Modernity. Rereading Japanese Women’s Magazines. Kyoto: Nichibunken. 2000.
  • “Ishikawa Takeyoshi und Hanamori Yasuji – zwei männliche Frauenstimmen“(石川武美と花森安治の二人の男性による女性の声)Richter, Steffi (ed.) Japan Lesebuch III. Tübingen: Konkursbuch Verlag. 1998.

アクセル・クライン(Axel KLEIN)


ドイツ–日本研究所研究員。ボン大学にて日本研究博士号及び教授資格取得。日本政治、福祉政策、社会格差、政治と宗教を研究・専門分野とする。 e-mail: klein@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • Das politische System Japans(日本の政治システム)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 2006.
  • Das Wahlsystem als Reformobjekt – Eine Untersuchung zu Entstehung und Auswirkungen politischer Erneuerungsversuche am Beispiel Japan(選挙区制度改革・政治的な改正とその結果)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 1998.
  • ドキュメンタリー映画にPictures at an Election or How to Get Votes in Japan(日本における選挙活動)68 Min, English subtitles, German Institute for Japanese Studies, Tokyo. 2008.

11:00-12:20
セッション1:社会階層・社会的再生産・少子化 Social Class, Social Reproduction and Fertility

司会:

カール-ウルリッヒ・マイヤー(イエール大学)

カール-ウルリッヒ・マイヤー(Karl Ulrich MAYER)


イェール大学社会学及び社会格差とライフコース研究センター教授。フォーダム大学で修士課程修了後、コンスタンツ大学で博士号取得。社会格差と社会的流動性、高齢化とライフコースの社会学、社会人口学、 職業構造と労働市場を研究・専門分野とする。 e-email: uli.mayer@yale.edu


主な論文・著書:


  • Solga, Hと共編でSkill Formation: Interdisciplinary and Cross-National Perspectives(技術形成の国際比較)New York: Cambridge University Press. 2008.
  • K.S.Cortiona, J.Haumert, A. Lechinsky, L. Trommerと共編でDas Bildungswesen in der Bundesrepublik Deutschland. Strukturen und Entwicklungen im Uberblick.(ドイツの教育システム)Hamburg: Rowohlt. 2008.
  • M. Diewald, A. Goedickeと共編でAfter the Fall of the Wall: Life Courses in the Transformation of East Germany(ベルリンの壁崩壊の後に-変化する東ドイツにおけるライフコース). Palo Alto, CA: Stanford University Press. 2006.

「貧困問題が深刻な日本」

橘木 俊詔(同志社大学)



 日本が格差社会に入ったとの一般認識が高まった。国民の貧富格差が拡大し、かつ階層固定化の現象が定着したとの認識である。一億総中流社会と信じられてきた日本と異なる時代となったのである。
 格差社会の新しい現象、あるいはもっと深刻な問題として貧困が日本を襲うようになっている。OECDの国際比較研究によると、日本の貧困率(全人口のうち何%が貧困か)は先進諸国の中で第3番目の高さ、という報告書が出版された。本発表はその貧困問題を主として扱う。
 日本で貧困が深刻になった理由として次のようなものがある。第1に、経済不況が続いた。第2に、社会保障制度(年金、医療、介護)の改革が低所得者を直撃した。第3に、家族の変容が激しく、家族の支援体制が弱くなった。


 日本の貧困問題を解決するには、いくつかの方策がある。第1に、景気回復を計ること。特に地方経済の活性化が必要である。第2に、社会保障制度を抜本的に改革して、国民にセーフティネットを十分に与える必要がある。第3に、最低賃金の額をかなり上げる政策が必要である。
 貧困問題は食べていけない人がいる、という意味で深刻であるが、貧困家庭に育った子弟は良い教育を受けられず、貧困の再生産という現象を生む原因ともなっている。


橘木 俊詔(たちばなき としあき)


同志社大学経済学部教授。ジェンズ・ポプキンス大学大学院で博士号を取得。労働経済、公共経済を研究・専門分野とする。 e-mail: tachiba@mail.doshisha.ac.jp


主な論文・著書:


  • Confronting Income Inequality in Japan. Cambridge, MA: MIT Press. 2005.
  • 『格差社会』(岩波新書2006年)
  • 『女女格差』(東洋経済新報社2008年)

「ドイツにおける出生/出生率と社会的再生産との関連」
- スライド

シュテッフェン・ヒルメルト(テュービンゲン大学)


 本発表では、社会格差及び人口動態の分析を基に、ドイツの世代間における社会的再生産を分析する。社会格差の重要な側面はダイナミックな視点によってのみ理解できると言える。社会的流動性は通常、個人及び社会的集団が社会における様々な位置を移動することとして理解されているからだ。このような社会的な位置付けが格差を作り出している限りにおいては、社会的流動性は個人及び集団レベルにおけるさまざまな社会的地位の優位性もしくは不利性の根強さを示す指標として見なすことができ、世代間における社会的流動性の研究は非常に有意義なものであると言える。


 また一方で、人口の分析を行うことは、人口の推移とりわけ家族構成及び出生率に着目することになる。人口動態に顕著な社会的差異が存在することについては証拠があるのにも関わらず、社会格差の問題と人口学的分析は別々の発展を遂げてきた歴史がある。


 本研究は、親世代の社会的位置づけが次世代の占める地位に及ぼす影響に焦点をあて、世代間において社会的地位がどのように受け継がれてきたかを分析するため、上に挙げた二つの分析方法を統合して行うものである。ミクロレベルの社会的再生産をライフコースの枠組みの中に位置づけ、親の社会的背景がどのようにして形作られたのか、子どもはいるのか、いるのならばどのようなタイミングで生まれたのか、また、どのような確率で子どもたちが高い水準の教育を受け、どのような社会的地位を得るのかを分析する。この中で特に注目するのは、再生産の様々な側面におけるトレードオフである。本発表は、以上のような分析の枠組みを用い、過去数十年の(西)ドイツにおいて、どのような度合いで世代間における社会的再生産が歴史的に行われてきたのかを、公式に発表されている統計および長期にわたるアンケート調査のデータを基に考察するものである。


シュテッフェン・ヒルマット(Steffen HILLMERT)


テュービンゲン大学社会学部教授。バンベルグ大学で社会学部修士号、ベルリン自由大学で社会学博士号取得。 社会格差、ライフコース、教育社会学、労働市場、比較研究、研究方法論、及び 科学社会学を研究・専門分野とする。 e-mail: steffen.hillmert@uni-tuebingen.de


主な論文・著書:


  • Karl Ulrich Mayerと共編でGeboren 1964 und 1971 – Neuere Untersuchungen zu Ausbildungs- und Berufschancen in Westdeutschland(西ドイツにおける教育と雇用の機会-1964-71年生まれのコーホートを例に). Wiesbaden: Verlag für Sozialwissenschaften. 2004.
  • Marita Jacobと共著で “Social inequality in higher education: is vocational training a pathway leading to or away from university? “(高等教育における社会格差-職業訓練と大学教育の関係)European Sociological Review (19) 3: 319–334. 2003.
  • Ausbildungssysteme und Arbeitsmarkt. Lebensverläufe in Großbritannien und Deutschland im Kohortenvergleich (教育システムと労働市場-イギリスとドイツにおけるライフコースの比較). Wiesbaden: Westdeutscher Verlag. 2001.

討論

2日目          2008年11月7日 (金)

14:30-15:50
セッション6:政策 Policy

司会:

パトリシア・ボーリング(プルデュー大学)


パトリシア・ボーリング (Patricia BOLING)


プルデュー大学政治学部・女性学プログラム教授。カリフォルニア大学バークレー校にて政治学修士及び博士号取得。比較社会政策、比較福祉国家、家族政策、公領域・私領域の問題、フェミニスト理論を研究・専門分野とする。 e-mail: boling@purdue.edu


主な論文・著書:


  • “Demography, culture, and policy: Understanding Japan’s low fertility“ (民主主義、文化と政策-日本における少子化) Population and Development Review, 34(2): 307–326. 2008.
  • “State Feminism in Japan?“ (日本の官製フェミニズム?) U.S.-Japan Women’s Journal 33 (近刊)
  • “Policies to Support Working Mothers and Children in Japan“(働く母親と子どものための政策)McCall Rosenbluth, Frances (ed.): The Political Economy of Japan’s Low Fertility. Palo Alto, CA: Stanford University Press. 2007.

「日本の家族政策とその社会的不平等との関連」

アクセル・クライン


ドイツ日本研究所


 出生率の低下は1990年から政治課題にあがっており、これまでにもかなりの数の対策が打たれてきた。しかし、出産と子育てにかかる費用や教育費の高さが日本の若いカップルにとって、(より多くの)子どもをもつことへの障害になってきたことは広く認められているのにもかかわらず、資産調査に基づいた経済的支援の必要性については政治家たちの中で充分に論じられてこなかった。


 それとは反対に、日本政府内の議論は、同様に出生率の低いドイツでの児童手当や両親手当などの支援策をみて、経済的支援策の有効性を疑問視する傾向にある。同じ方向性の政策としては、日本の少子化対策の中でももっとも新しい、ワーク・ライフ・バランスの推奨が挙げられる。若い家族向けの経済的支援にも新政策の一部が含まれてはいるが、ワーク・ライフ・バランスを中心としたこの新しい取り組みは、格差問題に充分に目を向けていない。


 本発表は、なぜこのようなことが起こるのかに注目し、政治家の大部分にとって、少子化問題は優先順位が低すぎるということを指摘する。


アクセル・クライン(Axel KLEIN)


ドイツ–日本研究所研究員。ボン大学にて日本研究博士号及び教授資格取得。日本政治、福祉政策、社会格差、政治と宗教を研究・専門分野とする。 e-mail: klein@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • Das politische System Japans(日本の政治システム)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 2006.
  • Das Wahlsystem als Reformobjekt – Eine Untersuchung zu Entstehung und Auswirkungen politischer Erneuerungsversuche am Beispiel Japan(選挙区制度改革・政治的な改正とその結果)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 1998.
  • ドキュメンタリー映画にPictures at an Election or How to Get Votes in Japan(日本における選挙活動)68 Min, English subtitles, German Institute for Japanese Studies, Tokyo. 2008.

「ドイツの家族政策と社会的不平等の関連」
- スライド

クリスティーネ・ヴィンバウアー(ベルリン社会科学研究センター)/ アネッテ・ヘニンガー(ベルリン社会科学研究センター)


ドイツにおける家庭政策は現在新しい方向に向かっている。連立政権の下で保守的な家族省の改革が行われ、それによって保守的な福祉国家の特徴とされるものに変化がもたらされた。


 イエスタ・エスピン=アンデルセンの福祉レジームの類型を用い、本論文はまず、1990年代終盤まで続いたドイツの家族政策の基盤となった旧パラダイムについて、殊にその社会格差に関する影響を考察する。エスピン=アンデルセンは格差を考慮する際、雇用状況という側面に焦点を当てているが、我々は彼の理論に対するフェミニストたちの批判をふまえ、配偶者の有無や子どもの有無によってうみだされる格差にも注目する。


 次に分析するのは、政策目標と収入を元に計算される子育てのための金銭的支援の(潜在的な)効果である。この支援策は新しく導入された中心的改革のひとつであり、本改革は母親たちの労働市場への参入を促すのに加えて出生率を上げるというもうひとつの目標を含んでいる。我々はここにドイツの家族政策におけるパラダイムシフトを見る。すなわち、(脱)家族化、(脱)商品化、格差という三つの要素の相互作用の変化である。


 しかし、我々は新しいパラダイムは高い技能をもつ親により良い機会を与えることを可能にする一方で、家族間や特に母親間の格差を助長するものであると懸念する。労働市場への参入および出産の奨励という二重の戦略は、有能とされる女性のみを解放し、労働市場に参入できない女性や、将来の成功を有望視される子どもを産み育てることのできない女性にとっては、社会的参加を阻むものとなる。さらに、有能とされる女性たちにとってさえも、理想的な働き手でありつつ、より多くの子どもを産むという両方をこなすことは、仕事と家庭の両立の難しさや男女平等のレベルの低さのため、不可能に近いといえる。


クリスティーネ・ヴィンバウアー(Christine WIMBAUER)


ベルリン社会科学研究センター社会学教授。ルートヴィヒ・マキシミリアン大学にて修士および博士号取得。社会格差、ジェンダー、パートナー関係の社会学、労働、団体、社会政策、質的調査を研究・専門分野とする。 e-mail: wimbauer@wzb.ed


主な論文・著書:

  • Annette Henninger、Rosine Dombrowskiと共著でDemography as a Push towards Gender Equality? Current Reforms of German Family Policy(人口と男女平等-ドイツ家族政策の改革)Social Politics, 16 (3). 2008. (http://sp.oxfordjournals.org)
  • Annette Henninger, Rosine Dombrowskと共著で “Geschlechtergleichheit oder exklusive Emanzipation? Ungleichheitssoziologische Implikationen der aktuellen familienpolitischen Reformen“(男女平等、それとも制限つきの解放?)Berliner Journal für Soziologie, 18 (1): 99–128. 2008.
  • Geld und Liebe. Zur symbolischen Bedeutung von Geld in Paarbeziehungen(金銭と愛-パートナー関係における金銭の象徴的な意味)Frankfurt, New York: Campus. 2003.


アネッテ・ヘニンガー(Annette HENNINGER)


ベルリン社会科学研究センター研究員。専門は政治学。ベルリン自由大学で博士号取得。労働社会学、雇用と組織、新しいメディア、ITと文化産業、労働市場と社会政策、政治機構理論、及び女性の雇用とカップルにおける性別役割分業の変化を研究・専門分野とする。 e-mail: Annette.Henninger@wzb.eu


主な論文・著書:


  • Christine Wimbauer、Rosine Dombrowskiと共著 “Demography as a Push towards Gender Equality? Current Reforms of German Family Policy“(人口と男女平等-ドイツ家族政策の改革), Social Politics, 16 (3). 2008.(http://sp.oxfordjournals.org).
  • Christine Wimbauer、Rosine Dombrowskiと共著で“Geschlechtergleichheit oder ‚exklusive Emanzipation’? Ungleichheitssoziologische Implikationen der aktuellen familienpolitischen Reformen“(男女平等、それとも制限つきの解放?)Berliner Journal für Soziologie, 18 (1): 99–128. 2008.
  • Ulrike Papouschekと共著で “Occupation matters – Blurring work life boundaries in mobile care and the media industry“(ゆらぐ仕事と生活の境界-モバイルケアとメディア産業)Chris Warhurst, Doris Ruth Eikhof and Axel Haunschild (eds.). Work Less, Live More? A Critical Analysis of the Work-Life Boundary. Basingstoke: Palgrave Macmillan: 153–172. 2008.

討論

1日目          2008年11月6日 (木)

14:00-15:20
セッション2:父親と「ワーク・ライフ・バランス」 Fathers and Work-Life Balance

司会:

グレンダ・ロバーツ(早稲田大学)


グレンダ・ロバーツ(Glenda S. ROBERTS)


早稲田大学アジア太平洋研究科人類学教授。人類学、アジア研究修士号、及び人類学博士号をコーネル大学にて取得。現代日本におけるジェンダー、人口移動、仕事と家族を研究・専門分野とする。 e-mail: robertsgs@waseda.jp


主な論文・著書:


  • “Immigration Policy: Framework and Challenges“(移民政策の枠組みと課題)Coulmas, Florian, Harald Conrad, Annette Schad-Seifert and Gabriele Vogt, (eds.). The Demographic Challenge: A Handbook about Japan. Leiden and Boston: Brill: 765-780. 2008.
  • “Similar Outcomes, Different Paths: The Cross-national Transfer of Gendered Regulations of Employment“. Walby, Sylvia, Heidi Gottfried, Karen Gottschall and Mari Osawa (eds.). Gendering the Knowledge Economy: Comparative Perspectives. London: Palgrave: 141-161. 2007.
  • “The Shifting Contours of Social Class in Japan“(変化する社会階級)Robertson, Jennifer (ed.). A Companion to the Anthopology of Japan. London: Blackwell: 104-124. 2005.

「父親のワーク・ライフ・バランスの現状と課題」

渥美 由喜(富士通総研)


 家事育児に関して、父親の参加状況を見ると、五年前と比較して「ごみを出す」とか「食事の後片づけをする」が増えている一方で、育児への関わり(子どもを叱る・褒める、お風呂に入れる、一緒に遊ぶ)が減っている。つまり、夫は妻に気を遣っているものの、子育てへの参加は遅々として進んでいない。これは、長時間労働ゆえである。父親が帰宅する時刻と育児への参加状況の関係を見ると、帰宅が早い父親は育児に参加する比率が高い。


 長らく続いた平成大不況の中で、企業はリストラを図り、残った従業員に課せられる負荷が増えた。また、賃金が伸び悩む中で、残業代を稼ぐために遅くまで会社に残っている者もいる。そうした構造的な要因が長時間労働となって父親の家庭回帰を難しくしている。
 最近、筆者は日本企業に蔓延している「長時間労働は美徳」というウイルスに対するワクチンが「ワーク・ライフ・バランス(以下、WLB)」だと考えるようになった。


 これまでWLB先進企業国内外五百社をヒアリングし、国内三千社、海外五百社の企業データを分析した。WLBは、従業員のやる気を引き出すとともに、業務効率を改善し、時間あたりの生産性を著しく向上させている。一方で、WLBは「思いやり」だと思う。自分の時間が大切なのはもちろんだが、WLBに取り組むと部下や家族の時間も尊重するようになる。このことに従業員が「気づく」ためのちょっとしたきっかけ作り、これこそが「仕事と子育てを両立」しやすい職場にするための最大の課題であろう。


渥美 由喜(あつみ なおき)


富士総合研究所主任研究員。内閣府「少子化社会対策推進会議」委員。1992年3月 東京大学 法学部政治学科卒業。社会保障、人口問題、家計・消費、労働・雇用を専門分野とする。


主な論文・著書:


  • 「「経済教室」 少子化と日本 子育ての社会化進めよ 企業風土の変革を 社員の子持ち率など公表」(日本経済新聞朝刊2005年4月7日、27ページ)
  • 「仕事・家庭生活の調和と経済活力の維持」(日本内閣府2005年)
  • 「115社における仕事と育児の調和への新しい取り組み」(経済産業省2005年)

「高学歴の父親にとっての仕事と家庭の両立。ドイツにおける男性大学教員のワーク・ライフ・バランスの実証的分析から 」
- スライド

ユリア・ロイター(トリーア大学)/マーレン・ショルヒ(トリーア大学)


子どものいない大学卒業女性が学者としてのキャリアで苦悩し、母親になることを我慢してきたことは、しばしばドイツにおいて少子化問題のひとつの側面としてとらえられてきた。その一方で、子どものいる女性大学教員は家族、そして女性の社会進出のための政策のモデルとなってきた。
 ジェンダー研究では、女性たちが直面する仕事と子育ての両立の難しさや、彼女たちに与えられた選択肢に関する問題が取り上げられてきた。しかし、このような女性たちよりもはるかに多く存在する、子どものいる男性教授たちは研究の対象外とされてきた。このような男性教授たちも、女性と同じようにストレスを感じ、男性ばかりの同業者たちによって作られる科学界特有の中の文化に苦労している。研究者というのは、専門的職業というだけでなく、無条件の献身を求められる任務のように考えられている節があるためである。


 科学界にはパートタイムというものはなく、研究職を目指すことは、時に自己搾取の傾向さえ意味する。科学者になるということは、完全にその世界に入り、そのコミュニティーの一員になるということなのだ。そのような環境に身をおきつつも、男性教員も他の父親と同じように、子どもたちと共に過ごし、家での時間を持つことで、自分の子どもの成長の過程に参加したいと思っている。「よい母親」という一般的なイメージと平行して、彼ら父親たちもまた、社会にある「思いやりのある父親」という理想像に直面している。


 出生率と社会格差の社会学的研究は多くの場合、シングルマザー等、社会的に不利な立場におかれた人々を中心にしており、エリートと言われる男性大学教員のような人々のワーク・ライフ・バランスは注目されてこなかった。フランスの社会学者ピエール・ブルデューの理論にもあるとおり、文化資本、社会関係資本、及び経済資本等、男性大学教員に自由にできる資産が充分にあることは確かである。しかし、彼らはその一方で仕事と子育ての両立の問題に直面している。それは、「社会的地位があるのにもかかわらず」ではなく、彼らの「社会的地位のためにもたらされた」問題なのである。本発表は、実際のデータを基にした初の研究の結果である。


ユリア・ロイター(Julia REUTER)


トリーア大学社会学教授。アーヘン大学で博士号取得。社会学理論、カルチュラルスタディー、ジェンダーを研究・専門分野とする。 
e-mail: reuter@uni-trier.de


主な論文・編著書:


  • Ordnungen des Anderen. Zum Problem des Eigenen in der Soziologie des Fremden(他者の社会学における自己の問題). Bielefeld: transcript. 2002.
  • Geschlechterleben im Wandel. Zum Verhältnis von Arbeit, Familie und Privatsphäre(変化する性別役割分業-雇用、家族と私領域 )Tübingen: Stauffenburg. 2006.(編書)
  • Professor mit Kind. Erfahrungsberichte von Wissenschaftlern(子供を持つ教授)Frankfurt a.M.: Campus. 2008. (編書)

マーレン・ショルヒ(Maren SCHORCH)


ビーレフェルト大学社会学研究員。修士号を取得し、現在はトリーア大学にて博士課程に在籍。アイデンティティ、伝記、社会学理論、質的社会調査を研究・専門分野とする。 e-mail: maren.schorch@uni-bielefeld.de


主な論文・著書:


  • “Rituelle und symbolische Inszenierung von Zugehörigkeit“(民族であることの儀式的・シンボル的な演出)Das sorbische Osterreiten in der Oberlausitz“, Willems, Herbert (ed.). Theatralisierung in der Gesellschaft. Vol. 1, Opladen: VS Verlag für Sozialwissenschaften.(近刊)
  • Alois Hahnと共著で“Technologies of the Will and their Christian Roots“(遺言とキリスト教)Maasen, Sabine, Barbara Sutter (eds.): On willing Selves. Neoliberal Politics and the Challenge of Neuroscience. London: Palgrave Macmillan: 53–76. 2007.
  • “Tests und andere Identifikationsverfahren als Exklusionsfaktoren“(排斥要素としてのテストと確認方法)Gunsenheimer, Antje (ed.). Grenzen, Differenzen, Übergänge. Spannungsfelder inter- und transkultureller Kommunikation. Volkswagenstiftung, Bielefeld: transcript: 253–268. 2007.

討論

2日目          2008年11月7日 (金)

10:00-11:20
セッション4:医療 Health Care

司会:

バーバラ・ホルトス


ドイツ日本研究所


バーバラ・ホルトス(Barbara HOLTHUS)


ドイツ–日本研究所研究員。専門は社会学。トリーア大学にて博士号取得。ジェンダー、メディア、保育問題、家族社会学、社会変化、及び人口推移を研究・専門分野とする。 e-mail: holthus@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • “Traum“- oder „Alptraum“-Männer? Männerbilder der Frauenzeitschrift An an in den späten 90er Jahren“(“夢のような” それとも “悪夢のような” 男性?-1990年代後期の雑誌『アンアン』における男性の表象)Gössmann, Hilaria; Andreas Mrugalla (eds.): 11. Deutschsprachiger Japanologentag in Trier 1999, Vol. 1. Münster, Hamburg, London: LIT-Verlag. 2001.
  • “Sexuality, Body Images and Social Change in Japanese Women’s Magazines“(日本の女性誌におけるセクシュアリティー、身体イメージと社会変化)Wöhr, Ulrike, Barbara Hamill Sato (eds.) Gender and Modernity. Rereading Japanese Women’s Magazines. Kyoto: Nichibunken. 2000.
  • “Ishikawa Takeyoshi und Hanamori Yasuji – zwei männliche Frauenstimmen“(石川武美と花森安治の二人の男性による女性の声)Richter, Steffi (ed.) Japan Lesebuch III. Tübingen: Konkursbuch Verlag. 1998.

「日本における出産のポリテックス」
- スライド

中山 まき子(同志社女子大学)


 21世紀に入り、日本の出産・助産環境は悪化の一途をたどり、「お産難民」という表現が用いられるほど、安全・安心に子どもを産むことができない状況にある。


 本報告では、日本のリプロダクションと医療に関する課題の中から、出産・助産という営為を取り上げ、その歴史的変容過程と、変容を促した政策を分析し、いわゆるお産難民がなぜ生じているのかを報告する。


 具体的には、1―1)まず日本で法的に認められた出産場所と助産者について、その増加・変容過程を示す。その上で、1-2)出産・助産は明治期に衛生行政の政策対象と位置づけられ、「出産介助の専門職化」が図られたこと、1-3)戦後1958年に国家(旧厚生省)により「出産の施設化」政策が開始され、それはやがて「出産の医療化」を招来させたことを筆者の研究から明らかにする。2)さらに、2000年代の出産・助産現場の混乱を政策文書等から読み解き、「施設化・医療化のほころびとその原因」を考える。その上で、3)WHOが示している「正常産のケア指針」を紹介し、日本のケアと比較検討する。また、妊娠・出産に必要な経費と貧困との関係も検討する。


 以上から、今後日本の母子保健政策/医療政策には、ユーザーの視点に立った、良質・安心・安全な環境を再構築する必要があること、そのためにはクリニカルガバナンスの導入と実践が、また人間の安全保障という理念へのパラダイムシフトが、必要であることを提案したい。

山田 昌弘(やまだ まさひろ)


中央大学文学部教授。東京大学大学院修了。家族・社会学を研究・専門分野とする。 e-mail: m-yamada@tamacc.chuo-u.ac.jp


主な論文・著書:


  • 『少子社会日本』(岩波新書2007年)
  • 『迷走する家族』(有斐閣2005年)
  • 『希望格差社会』(筑摩書房2004年)

「進む少子化とリプロダクティブ・テクノロジーによる解決法-富裕層だけの解決策か?」
- スライド

コリンナ・オンネン=イーゼマン(フェヒタ大学)


 19世紀後期以降、産業化をはたした国ではほぼどこでも、子どもをもたないカップルの数が継続的に増加してきた。この傾向はドイツにおいて非常に強い。リプロダクティブ・テクノロジーの開発と発展は社会に大きな影響を及ぼしているが、その行き着くところは未だに予測できない。世間でも、また科学者の間でも、このような医療の発達によって「得られるもの」については熱く論じられている。


 数多くのメディアによる報道は、リプロダクティブ・テクノロジーについて、不妊治療によって子どもをもつという願いがついにかなう、というカップルたちの見方を反映するものが多い。子どものいないカップルたちはリプロダクティブ・テクノロジーを、自分たちの子どもをもうけて家族を構成するという社会が定めた目標のための唯一の方法と見ているように見受けられる。


 ドイツ語圏において医療リプロダクティブ・テクノロジーに関する理論及び実際の社会学的研究が始められたのは、比較的最近のことである。この問題に関する文献は1980年台後半から存在するが、実際に不妊治療を受けたカップルに焦点をあてた研究はドイツに存在しなかった。その点で、リプロダクティブ・テクノロジーの社会的側面に焦点をあて、総合的モデルを構築し実際のデータを使って研究した本研究は革新的であるといえる。
 リプロダクティブ・テクノロジーを選んだ女性たちのインタビューからは、彼女たちの多くが、母親像や家族の役割というものを、それが仕事に対する取り組み方とは一致しないのにも関わらず内面化しており、それが人生設計の中の大きな位置を占めていることがわかる。調査に協力した女性たちは誰もが、聞かれていないのにも関わらず、母親が働く意味や仕事と家庭の両立について語った。従って、このインタビューは彼女たちが女性の「普通の生き方」というものに沿って生きようとしていることを物語っていると言える。結婚はその後に待っている出産と雇用の中断を意味するものとしてとらえられている。


 本発表は現代産業社会の意味するもの、殊に社会格差に焦点を当てる。このような治療には保険が適用されないため、リプロダクティブ・テクノロジーの恩恵を受けるのは裕福層のみということが考えられるためである。


コリンナ・オンネン=イーゼマン(Corinna ONNEN-ISEMANN)


フェヒタ大学(ドイツ)社会学教授。1986年オルデンブルグ大学社会学博士号取得後、同大学にて博士号取得。家族社会学、特に子どもをもたないという選択について、ジェンダーと多様化する女性のキャリア、高齢となった姉妹関係を研究・専門分野とする。 
www.uni-vechta.de/ibs/sozialwissenschaften/142.html


主な論文・著書:


  • Kaiser, Peter と共著で Psychologie für den Alltag(日常の心理学), Heidelberg: mvgVerlag. 2007.
  • “Der Kinderwunsch als Kampf zwischen Realität und Idealen – Analysen und Überlegungen anhand der Daten des DJI-Familiensurvey“(子どもをもちたいと望むこと - 理想と現実の葛藤として)Walter Bien, Jan Marbach (ed.). Familiale Beziehungen, Familienalltag und soziale Netzwerke. Ergebnisse der drei Wellen des Familiensurvey. Wiesbaden: VS-Verlag: 119–145. 2008.
  • “Deutsche Perspektive: Kinderlosigkeit–französische Perspektive: Elternschaft? Familienpolitik und Fertilitätsunterschiede in Frankreich und Deutschland“(ドイツとフランスにおける家族と出生率の政治)Diana Auth und Barbara Holland-Cunz (ed.): Grenzen der Bevölkerungspolitik. Opladen: Barbara Budrich: 165–180. 2007.

討論

11:40-13:00
セッション5:ジェンダー Gender

司会:

クリスティーナ  岩田


ドイツ日本研究所


クリスティーナ・岩田(Kristina IWATA-WEICKGENANNT)


ドイツ–日本研究所研究員。専門は近代日本文学。ベルリン自由大学で修士号、トリーア大学で博士号取得。ジェンダー、ポストコロニアル研究、文学における社会格差の表象を研究・専門分野とする。 e-mail: iwata@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • Alles nur Theater? Gender und Ethnizität bei der japankoreanischen Autorin Yû Miri(ジェンダーとエスニシティー-柳美里)Iaponia Insula, Studien zu Kultur und Gesellschaft Japans, Vol. 18. München: Iudicium. 2008.
  • 「アイデンティティの脱構築としての<自分探し>」(『社会文学-特集「在日」文学-過去、現在、未来』26号、pp.136–147、日本社会文学会2007年)
  • “Die Fremde als Heimat? Die Heimat als Fremde? Zu Identitätsdiskursen in der Literatur der koreanischen Minderheit in Japan“(在日文学におけるアイデンティティの言説)Lackner, Michael (ed.): Zwischen Selbstbestimmung und Selbstbehauptung. Ostasiatische Diskurse des 20. Und 21. Jahrhunderts. Baden-Baden: Nomos: 105–133. 2008.

「世帯の中の若者:ジェンダーからみた社会経済的格差」

白波瀬 佐和子(東京大学)



 本報告では、少子化を晩婚化・未婚化に着目して、成人未婚子とその親世帯の社会経済的不平等を検討する。特に、親との同別居を規定するにあたってのジェンダー差と親と同居する成人未婚子の経済格差の2点について、実証データを提示しながら議論する。少子化を世帯との関係から議論したのは、パラサイト・シングル論である。そこでは、親にパラサイトできる若者と、パラサイトできない若者の二極化が強調された。しかし、その実証的な根拠は不十分であり、未婚化・晩婚化のどこに二極分化が起こっているのか定かでない。本報告では、成人未婚子が親と同居するかどうかのみならず、親と同居する成人未婚子の経済的位置づけが階層化している状況を明らかにする。特に、20~39歳の前期成人未婚子と40歳以上の後期成人未婚子に分けて、その経済格差を議論する。


 分析の結果、親との同別居を決定する上に、成人未婚子の経済状況(個人所得)のみならず、母親就労の影響が子どものジェンダーによって異なることが明らかになった。成人未婚女性についてのみ母親就労の効果が認められ、そこでは母親の就労に伴う家庭内役割を代替する娘への役割期待が示唆された。さらに、成人未婚子の中でも、後期成人未婚子の一人くらし、一人親との同居世帯の貧困率が高く、低所得世帯では特に、親が子と同居することで経済的な恩恵を受けている状況が認められた。


白波瀬 佐和子(しらはせ さわこ)


東京大学大学院人文社会系研究科教授。オックスフォード大学社会学部で博士号を取得。社会学、特に社会階層・格差論、人口学を研究・専門分野とする。


主な論文・著書:


  • 『少子高齢社会のみえない格差 ジェンダー・世代・階層のゆくえ』(東京大学出版会2005年)
  • 『変化する社会の不平等 少子高齢化にひそむ格差』(編著、東京大学出版会2006年)
  • “Women’s Economic Status and Fertility: Japan in Cross-national Perspective” in Frances McCall Rosenbluth (ed.) The Political Economy of Japan’s Low Fertility. Palo Alto, CA: Stanford University Press: 37–59. 2007.

「少子化問題におけるジェンダーの役割とイメージ」
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アレキサンダー・ルーラー(アーヘン大学)


 ドイツにおいて、少子化は年齢層から見たときの人口のバランスを変えている。若い世代の人口が減る一方で、年配者の人口は増えている。ドイツの20歳から40歳という子どもをもつことのできる年齢にある世代は、彼ら自身に加え、数の増える上の世代をも経済的に支えることを求められている。さらに、彼らは人口減少に歯止めをかけるため、より多くの子どもを産むことを期待されている。


 伝統的には、家事やケアワークはほぼ全て女性の手によって行われてきたため、男性にとって良い父親であることと収入を得ることは一致しており、子育てと仕事の両立の難しさは女性のみが経験するものであった。


 しかし、ジェンダーに関するイデオロギーの変化及び女性の労働市場への参入により、男性もパートナーからの期待や自身の平等の観念から、より多くのケアワークをすべきだというプレッシャーを感じている。それでも女性の就業率が上がっている一方で、家庭内での性別役割分業は未だに大方変わっていない。本研究が示すとおり、カップルがこのようなパターンとは違う方法で家事を分担しようとした場合でさえも、実際に変えるのは難しい。
 子どもを持つことに対する姿勢も最近になって変化した。男性に比べ、より多くの女性が子どもを産むことを実際に考えることができるようになってきたのである。これは、「良い母親」や「良い父親」という観念への社会的意味づけの変化によって説明できる部分が大きい。


 本発表は、子どもをもつこと、仕事に就くことに関する決定をしていく中で、少子高齢化問題がどのような新しい種類のプレッシャーを生み出し、異なる年齢層間、また男女間においてどのような社会格差を生み出しているのか、そして将来どのような格差が生み出されていくのかを考察する。


カール・アレキサンダー・レーラー(Karl Alexander RÖHLER)


ドイツ、アーヘンのRWTH社会学研究所教授。専門はジェンダー研究。1997年ライプツィヒ大学にて社会学修士、2005年にブレーメン大学にて博士号取得。感情の社会学、仕事とジェンダー、質的研究および、異なる研究方法の統合を研究・専門分野とする。 e-mail: aroehler@soziologie.rwth-aachen.de


主な論文・著書:


  • Johannes Huininkと共著で“Prospects of Labor Division within Pair Relationships: Housework in Eastern and Western Germany”(パートナー関係の中での役割分担-東西ドイツにおける家事)”. In: Treas, Judith und Drobnic, Sonja (eds.): Dividing the Domestic: Men, Women, and Household Work in Cross-National Perspective. (近刊)
  • “Work-life-balance” ohne Erwerbsarbeit? – Arbeitslosigkeit, Männlichkeit und Vaterrolle“ (報酬のある仕事なしでのワーク・ライフ・バランス) In: Werneck, Harald, Beham, Martina und andere (eds.): Aktive Vaterschaft – Männer zwischen Familie und Beruf. Göttingen: Psychosozial-Verlag: 143-154. 2006.
  • Johannes Huininkと共著で Liebe und Arbeit in Paarbeziehungen. Zur Erklärung geschlechtstypischer Arbeitsteilung in nichtehelichen und ehelichen Lebensgemeinschaften (パートナー関係における愛と労働) Würzburg: Ergon. 2005.

ヘザー・ホフマイスター(Heather HOFMEISTER)


ドイツのアーヘンRWTH社会学研究所社会学教授。2002年にコーネル大学より博士号取得。高齢化とライフコース、ジェンダー、労働と家族社会学、社会変化、社会格差、公共機関、国際比較研究、文化、地理と人口の流動性、及び量的研究を研究・専門分野とする。 e-mail: hhofmeister@soziologie.rwth-aachen.de


主な論文・著書:


  • Eric Widmer、Gil Viryと共著で “The Life Course Perspective“(ライフコースの視点)in Mobile Living across Europe, Volume II: Causes and Consequences of Job-Related Spatial Mobility in Cross-National Perspective. Opladen: Barbara Budrich.(近刊)
  • Nina Baurと共著で “Some like them Hot: German views of male attractiveness“, Journal of Men´s Studies Special Issue, Men´s Studies in Europe. (近刊)
  • Blossfeld, Hans-Peter. と共著でGlobalization, Uncertainty, and Women´s Careers: An International Comparison(グローバリゼーション、不確実性と女性のキャリアの国際比較). Cheltenham and Northampton, MA: Edward Elgar. 2006.

討論

1日目          2008年11月6日 (木)

15:40-17:30
セッション3:地域格差 Region

司会:

フォルカー・エリス


ドイツ日本研究所

ドイツ–日本研究所研究員。専門は地理学及び、経済学。ボン大学にて修士および博士号取得。地域政策、地域計画、労働市場と雇用、および日本近代経済史を研究・専門分野とする。 e-mail: elis@dijtokyo.org

主な論文・著書:

  • Regionale Wirtschaftsförderung in Japan: der Wirtschaftsraum der Präfektur Shizuoka(日本の地域における経済的援助-静岡県を例に)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 2005.
  • “The Impact of the Ageing Society on Regional Economies“(地域経済における高齢化の影響)Coulmas Florian, Harald Conrad, Annette Schad-Seifert und Gabriele Vogt (eds.): The Demographic Challenge: A Handbook about Japan. Leiden: Brill: 861–877. 2008.
  • Lützeler, Ralphと共著で“Der Demografische Wandel in Japan – Hintergründe und aktuelle Entwicklungen in der Sozial-, Beschäftigungs- und Regionalpolitik“(日本の人口変化-社会、雇用、地域政策の新しい発展)Wirtschaftspolitische Blätter, 54(4): 705–720. 2007.
「日本における出産・結婚行動の地域差」
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ラルフ・リュツェラー


ドイツ日本研究所

出生率の推移については国による違いや異なる社会階層間の違いについて研究が進んでいるが、国内の地域差も同様にいわゆる第二出生力転換によって影響を受けているのかは明らかにされていない。

非婚者における出生率の極端に低い日本は、既婚者における出生率と結婚パターンの変化を区別することを可能にするため、この点を分析するにあたり非常に適したケースであると言える。この研究には、既婚者における出生率と各都道府県における既婚女性の割合を組み合わせた、A. Coaleの開発したハッタライト指数を使い、日本で第二出生力転換がおこった1975年から2005年を対象とした。

重要な研究結果として言えることは、昨今の出生率低下は大都市部(殊に東京)から他の地域に広まったということで、それによって、少なくとも現在の段階でははっきりとした地域差が見られる。これは主に25歳から29歳の女性の高い就業率が拡散することによって増幅されており、結果として潜在的な結婚の先送りや放棄へとつながっている。それでもなお、既婚者における出生率および結婚パターンの地域差の最新データでさえも、昨今の変化のみならず、歴史的、社会文化的な要因を反映したものでもある。

ラルフ・リュツェラー(Ralph LÜTZELER)

ドイツ–日本研究所研究員。専門は人文地理学。ボン大学修士課程で地理学、日本研究、交通政策を専攻。ボン大学文学部博士課程で地理学、日本研究、歴史地理学を専攻、博士号を取得。日本における都市及び人口地理学、地理と社会を研究・専門分野とする。 e-mail: luetzeler@dijtokyo.org

主な論文・著書に

  • Ungleichheit in der Global City Tōkyō. Aktuelle sozialräumliche Entwicklungen im Spannungsfeld von Globalisierung und lokalen Sonderbedingungen.(東京における社会格差-新しい社会空間的発展とグローバリゼーションと地域性の影響). Monographien aus dem Deutschen Institut für Japanstudien, 42. Munich: Iudicium. 2008.
  • “Demography“(地理)Kreiner, Josef, Ulrich Möhwald and Hans Dieter Ölschleger (eds.): Modern Japanese Society (Handbook of Oriental Studies-Handbuch der Orientalistik, Section 5, Japan, vol. 9). Leiden and Boston: Brill: 15-61. 2004.
  • “Population increase and “New build Gentrification” in Central Tōkyō“(東京中央部における人口増加と中産階級化)Erdkunde 62 (4).(近刊)
「札幌市の少子化:その特徴と要因−出生力の地域格差を考える」
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原 俊彦(札幌市立大学)


なぜ緑豊かで広大な北海道の、その中心都市である札幌が、全国でも1、2位を争う低出生力地域となってしまったのか。沖縄の高い出生力と並び、長年、疑問とされてきた札幌市の少子化を地域間格差のケーススタディとして紹介する。


 札幌市の出生力低下はすでに1974年頃から一貫しており基本的には日本全体の少子化傾向を反映したものであるが、全国との格差(地域の値÷全国値)は年々拡大しており、2006年時点で0.78と東京都と並ぶ低水準となっている。しかし他の政令指定都市とは異なり、独身者の結婚行動と夫婦の出生行動がともに作用している点や、晩婚・晩産化によるキャッチアップ(先送りした結婚や出生を高年齢で実現)が働かない点で特異である。


 未婚者の初婚傾向と既婚者の出生傾向に対する社会経済要因(過去の先行研究から抽出した36の変数)を分析した結果、学歴・産業就業構造の特異性が重要な役割を果たしていること、1965年から2000年までの札幌市の出生力低下は、この二要因(比較的高い男子の最終学歴と低い男子の第二次産業就業者割合)だけで十分説明できることがわかった。


 出生力の地域格差は地域の社会経済構造を反映しており、その縮小は容易ではない(また追求すべきものでもない)が、生活格差の縮小は必要であろう。また就業機会の充実により生産年齢人口の流出を抑制すれば、結果として出生数の増加は可能であると思われる。


原 俊彦(はら としひこ)


札幌市立大学デザイン学部デザイン学科教授。フライブルク大学哲学部にて社会学、政治学、経済政策を専攻し、社会学博士号を取得。人口社会学を研究・専門分野とする。 e-mail: hara@scu.ac.jp


主な論文・著書:


  • 「ドイツの少子化と家族政策の転換」(『人口学研究』42号、pp. 41-55、2008年5月)
  • 「札幌市の少子化:人口学的特徴・社会経済的背景・政策的対応可能性」(札幌市立大学研究論文集第2巻1号、pp.5-15、2008年3月)
  • 「地域人口と地方分権のゆくえ」(阿藤誠・津谷典子編著『人口減少時代の日本社会』 原書房、pp.187-208、2007年8月)

討論
「東西ドイツで出産を先送りする夫婦:教育、社会階層、配偶者の帰属階層と将来への不安:1971年度出生コーホートを事例として」

カール-ウルリッヒ・マイヤー(イエール大学)/エヴァ・シュルツェ(ベルリン社会研究所)

本発表では東西ドイツの1971年生まれの男女が、社会階層と教育水準の違いによって、どのように第一子出産を先送りしているかを分析する。データはドイツライフヒストリー研究(German Life History Study)で、1997-98年と2005年に行われた量的アンケート調査の全国データ、および2005年に行われたインタビューから成る。

初婚および第一子誕生時の年齢の中央値は、西ドイツで30年以上前から、東ドイツでは1991年から上がってきている。1971年生まれのコーホートに注目するのは、彼らがドイツ統一後に子どもをもち、家族を構成し始めた最初のコーホートであるためである。

東西ドイツの比較は、国内の2種類の異なる規模と構造をした格差をもつ社会において、教育水準と社会階層が、カップルが子どもをもつはじめの段階に与えた影響の分析を可能にする。東ドイツは比較的平等、かつ単一的で、階層という壁がなかったが(現在もその傾向が続いている)、西ドイツには教育と職業のための訓練システムを基にした顕著な階層構造が存在する。

結果として、東ドイツの方が西ドイツに比べて格差が小さいことだけでなく、東ドイツの方が社会階層間の助け合いが多く見られることが挙げられる。質的研究の結果は、同じ階層に属する男女を比較した際も、子どもをもつことの動機や、子どものもち方のパターンの大きな違いを浮き彫りにしている。西ドイツの男性が結婚を遅らせたり避けることは、子どもを産むことを考え家庭と仕事の両立について悩む女性の状況を更に複雑にしている。それに比べて東ドイツでは男女とも、たとえ厳しい経済状況下であったとしても、親になるということを当然のこととして考えている。このような特徴は、(伝統的な)早く子どもをもつことと、遅く子どもをもつことのはっきりと分かれた二つのパターンを形作っている。

カール-ウルリッヒ・マイヤー(Karl Ulrich MAYER)

イェール大学社会学及び社会格差とライフコース研究センター教授。フォーダム大学で修士課程修了後、コンスタンツ大学で博士号取得。社会格差と社会的流動性、高齢化とライフコースの社会学、社会人口学、 職業構造と労働市場を研究・専門分野とする。 e-email: uli.mayer@yale.edu

主な論文・著書:

  • Solga, Hと共編でSkill Formation: Interdisciplinary and Cross-National Perspectives(技術形成の国際比較)New York: Cambridge University Press. 2008.
  • K.S.Cortiona, J.Haumert, A. Lechinsky, L. Trommerと共編でDas Bildungswesen in der Bundesrepublik Deutschland. Strukturen und Entwicklungen im Uberblick. (ドイツの教育システム)Hamburg: Rowohlt. 2008.
  • M. Diewald, A. Goedickeと共編でAfter the Fall of the Wall: Life Courses in the Transformation of East Germany(ベルリンの壁崩壊の後に-変化する東ドイツにおけるライフコース). Palo Alto, CA: Stanford University Press. 2006.

エヴァ・シュルツェ(Eva SCHULZE)

ベルリン社会研究所所長。ベルリン工科大学で博士号取得。ライフコース、家族、東西ドイツの歴史的変化を研究・専門分野とする。  e-mail: e.schulze@bis-berlin.de, www.bis-berlin.de

主な論文・著書:

  • Karl Ulrich Mayerと共著で“Delaying Family Formation in East and West Germany – The Vocabulary of Motives, Career, Trajectories, Biographic Uncertainty and Partner Relationships of the Women born in 1971“(東西ドイツにおける家族構成のプロセス)Andersson, G.I., et al. (eds.). The Demography of Europe: Trends and Perspectives. Berlin: Springer. 2008.
  • Friesdorf, W., Heine, A. 他と共著で (eds.) Sentha – Technik im häuslichen Alltag. Ein Forschungsbericht mit integriertem Roman(Sentha:家庭生活のテクノロジー) Berlin: Springer. 2007.
  • C. Gather, T. Schmidt, E. Wascher他と共著で (eds.) “Selbständige Frauen in Berlin-Erste Ergebnisse aus verschiedenen Datenquellen im Vergleich“(ベルリンの自立した女性) discussion paper 03/2008.Berlin: Harriet Taylor Mill-Institut. 2008.

2日目          2008年11月7日 (金)

16:10-18:00
セッション7:雇用と教育 Employment and Education

司会:

シュテフェン・ヒルマート(テュービンゲン大学)


シュテッフェン・ヒルマット(Steffen HILLMERT)


テュービンゲン大学社会学部教授。バンベルグ大学で社会学部修士号、ベルリン自由大学で社会学博士号取得。 社会格差、ライフコース、教育社会学、労働市場、比較研究、研究方法論、及び 科学社会学を研究・専門分野とする。 e-mail: steffen.hillmert@uni-tuebingen.de


主な論文・著書:


  • Karl Ulrich Mayerと共編でGeboren 1964 und 1971 – Neuere Untersuchungen zu Ausbildungs- und Berufschancen in Westdeutschland(西ドイツにおける教育と雇用の機会-1964-71年生まれのコーホートを例に). Wiesbaden: Verlag für Sozialwissenschaften. 2004.
  • Marita Jacobと共著で “Social inequality in higher education: is vocational training a pathway leading to or away from university? “(高等教育における社会格差-職業訓練と大学教育の関係)European Sociological Review (19) 3: 319–334. 2003.
  • Ausbildungssysteme und Arbeitsmarkt. Lebensverläufe in Großbritannien und Deutschland im Kohortenvergleich (教育システムと労働市場-イギリスとドイツにおけるライフコースの比較). Wiesbaden: Westdeutscher Verlag. 2001.

「ニューエコノミーの進行と格差社会の日本的問題」

山田 昌弘(中央大学)


 低収入で昇進の見込みがない単純労働を行う「ワーキング・プア」の増大は、先進国社会に大きな課題を突きつけている。労働の二極化は、科学技術の進展とグローバル化によって生じた「ニューエコノミー」の進展によってもたらされたものである。


 日本では、1)1990年代後半という短期間に生じたこと、2)若者が単純労働の主な担い手になったこと、3)低収入の若者の親同居(親へのパラサイト)によって、社会問題化が遅れたという特徴がある。


 それは、結果的に少子化をもたらし、希望のない若者を増やし、中年親同居未婚者の増大傾向など将来社会へのツケをもたらしている。教育や労働規制でこの問題を解決することは不可能である。増大する単純労働を誰に担って貰い、どのように社会で処遇するかを検討しなければならない。


山田 昌弘(やまだ まさひろ)


中央大学文学部教授。東京大学大学院修了。家族・社会学を研究・専門分野とする。 e-mail: m-yamada@tamacc.chuo-u.ac.jp


主な論文・著書:


  • 『少子社会日本』(岩波新書2007年)
  • 『迷走する家族』(有斐閣2005年)
  • 『希望格差社会』(筑摩書房2004年)

「日本における労働市場構成と少子化-ジェンダー、階層、教育、雇用」
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パトリシア・ボーリング(プルデュー大学)


 家事および子どもや年老いた親、病気の親戚の世話というような無償労働は、必要とされている福祉のニーズに対して国がどれだけ応えているかを探る鍵となる。そして、このようなケアワークをする女性は収入、夫への経済的な依存、貧困へのリスク、技能の習得や、やりがいのある仕事に就けないことなど、さまざまな面で社会の周縁におかれることになる。


 このような女性の周縁化の度合いは国によって異なり、さまざまな要因によって左右される。労働市場の構造(労働市場に柔軟性があり、雇用が中断した後でも仕事を見つけることができるか。職員が一時的に仕事をやめた後、再就職し常勤で働くことを拒む壁はないか。労働市場は中心となる職員と低い賃金で働く労働者を差別していないか、等)、働く親たちを支える政策の有無等から見える福祉国家としての特徴、非嫡出子に対する考え方や女性に求める母親や主婦としての姿といった文化的価値観、そして、男性の子育てやケアワークにかかわるための能力とやる気、などである。


 日本および他国の出生率を理解する上で、子どもを産んだ場合に減る収入の度合い、年金等の福利厚生の充実度、また、それまでに就いていたキャリアへの戻りやすさといった、子どもをもつことにおける女性の機会費用を考慮することは非常に重要である。本発表では、機会費用が社会政策、労働市場の構造、教育水準、結婚の機会及び離婚の可能性といった要因にどのように左右されるのかを探る。さらに、労働組合、雇用主や政府関係者が労働市場を形作る中でどのような役割をはたしているのかを考察する。これらは女性が育児休暇の後に正社員として働き続けることがどれだけ容易、もしくは困難であるかを理解するための鍵となるからである。


パトリシア・ボーリング (Patricia BOLING)


プルデュー大学政治学部・女性学プログラム教授。カリフォルニア大学バークレー校にて政治学修士及び博士号取得。比較社会政策、比較福祉国家、家族政策、公領域・私領域の問題、フェミニスト理論を研究・専門分野とする。 e-mail: boling@purdue.edu


主な論文・著書:


  • “Demography, culture, and policy: Understanding Japan’s low fertility“ (民主主義、文化と政策-日本における少子化) Population and Development Review, 34(2): 307–326. 2008.
  • “State Feminism in Japan?“ (日本の官製フェミニズム?) U.S.-Japan Women’s Journal 33 (近刊)
  • “Policies to Support Working Mothers and Children in Japan“(働く母親と子どものための政策)McCall Rosenbluth, Frances (ed.): The Political Economy of Japan’s Low Fertility. Palo Alto, CA: Stanford University Press. 2007.

「再雇用サイクルにおける女性の社会格差 ― 1935年以降生まれの西ドイツ女性のコーホート調査」
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ダナ・ミューラー(雇用調査局IAB、ニュルンベルク)


 西ドイツにおいて、女性の雇用パターンは変化を遂げてきた。1930年代生まれの女性においては結婚、または第一子誕生後に労働市場を去るケースが大半だったが、それより若い世代は子どもを産み終わると(育児休暇をすべて使うこともなく)職場に戻ることが多くなり、彼女たちは家庭と仕事の両立をこなすことを余儀なくされている。この研究は、女性の社会格差が異なるコホート間、ならびに同じコホート内で歴史的にどのように変化してきたかを探るものである。


 社会格差を計るひとつの指標となるのが、教育と収入の加重指数を示す、職業的地位の社会経済指数(the Socio-Economic-Index of Occupational Status)である。本発表では子どものいる女性といない女性の職業的地位を比較する。子供のいる女性たちはさらに、1.第一子をコーホートの平均的なタイミング(年齢)で産んだ女性、2.第一子を平均より早く産んだ女性、3.第一子を平均より遅く産んだ女性という、三つのグループに分ける。さらに、労働市場に参入する頃、第一子誕生以前、 そして女性が45歳になり家族構成がほぼ決定した状態という、という三つのステージにおける母親たちの就職状況に注目する。


 この研究は1975年から1995年のIAB雇用標本、および1996年から2003年の最新データ、ならびにドイツ年金保険のデータを基に行われた。これらのデータは雇用及び失業状態の正確な時期を含むもので、これを基に1935年以降生まれの女性の雇用パターンを知ることができる。本研究では西ドイツの10万人以上女性の教育水準、職業、子どもの誕生時が雇用状況にどのような影響を与えているかを探った。


ダナ・ミュラー(Dana MÜLLER)


2004年より雇用調査局研究員。社会学者。ライフコース、労働市場、仕事と家庭の両立の問題を研究・専門分野とする。 e-mail: Dana.Mueller@iab.de


主な論文・著書


  • Agnes Dundlerと共著で “Erwerbsverläufe im Wandel: Ein Leben ohne Arbeitslosigkeit – nur noch Fiktion? “(失業状態のない人生はありえないことなのか?)IAB-Kurzbericht (27). Nuremberg: Institut für Arbeitsmarkt und Berufsforschung. 2006.
  • “Der Traum einer kontinuierlichen Beschäftigung. Erwerbsunterbrechungen bei Männern und Frauen“(働き続けるという夢)M. Szydlik (ed.). Flexibilisierung. Folgen für Arbeit und Familie, (Sozialstrukturanalyse), Wiesbaden: VS Verlag für Sozialwissenschaften: 47-67. 2007.
  • Gabriele Fischer、Florian Janik、Alexandra Schmuckerと共著で “The IAB establishment panel. Things users should know“. Schmollers Jahrbuch. Zeitschrift für Wirtschafts- und Sozialwissenschaften, Jg. 129.(近刊)

討論

18:00
総括 Closing Remarks

バーバラ・ホルトス


ドイツ日本研究所

アクセル・クライン


ドイツ日本研究所


バーバラ・ホルトス(Barbara HOLTHUS)


ドイツ–日本研究所研究員。専門は社会学。トリーア大学にて博士号取得。ジェンダー、メディア、保育問題、家族社会学、社会変化、及び人口推移を研究・専門分野とする。 e-mail: holthus@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • “Traum“- oder „Alptraum“-Männer? Männerbilder der Frauenzeitschrift An an in den späten 90er Jahren“(“夢のような” それとも “悪夢のような” 男性?-1990年代後期の雑誌『アンアン』における男性の表象)Gössmann, Hilaria; Andreas Mrugalla (eds.): 11. Deutschsprachiger Japanologentag in Trier 1999, Vol. 1. Münster, Hamburg, London: LIT-Verlag. 2001.
  • “Sexuality, Body Images and Social Change in Japanese Women’s Magazines“(日本の女性誌におけるセクシュアリティー、身体イメージと社会変化)Wöhr, Ulrike, Barbara Hamill Sato (eds.) Gender and Modernity. Rereading Japanese Women’s Magazines. Kyoto: Nichibunken. 2000.
  • “Ishikawa Takeyoshi und Hanamori Yasuji – zwei männliche Frauenstimmen“(石川武美と花森安治の二人の男性による女性の声)Richter, Steffi (ed.) Japan Lesebuch III. Tübingen: Konkursbuch Verlag. 1998.

アクセル・クライン(Axel KLEIN)


ドイツ–日本研究所研究員。ボン大学にて日本研究博士号及び教授資格取得。日本政治、福祉政策、社会格差、政治と宗教を研究・専門分野とする。 e-mail: klein@dijtokyo.org


主な論文・著書:


  • Das politische System Japans (日本の政治システム)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 2006.
  • Das Wahlsystem als Reformobjekt – Eine Untersuchung zu Entstehung und Auswirkungen politischer Erneuerungsversuche am Beispiel Japan(選挙区制度改革・政治的な改正とその結果)Bonn: Bier’sche Verlagsanstalt. 1998.
  • ドキュメンタリー映画にPictures at an Election or How to Get Votes in Japan(日本における選挙活動)68 Min, English subtitles, German Institute for Japanese Studies, Tokyo. 2008.

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